大久保満男
公益社団法人日本歯科医師会・元会長
力を生み出す口と食
歯科医療は、明治以後の歴史の中で、虫歯と歯周病の治療、そして歯を失った後の機能回復に全力を挙げてきました。しかしこれは人間の常ですが、一つのことに集中すればするほど、自分の仕事が何を目的にしているのかを視野の内に収めることができなくなります。
私は、このことを視野に入れて、「歯科医療とは生きる力を支える生活の医療である」と定義し、それを社会に位置付けるべく提唱してきました。この定義の根底には、「人生100年時代」と呼ばれる長寿社会の重い課題があります。人生は長くなればなるほど、楽しみも増すでしょうが、しかし多くの悩みや苦しみも増すでしょう。
私の言う「生きる力」とは、喜びや楽しみを実現するための「力」を意味していますが、同時に避けられない苦しみや悩みに立ち向かう「力」でもあります。そしてその「力」を生み出す大事な源の一つが「口と食」だと、私は考えています。
この度の新たな法人の設立は、長寿社会が単に「長さ」だけではなく、最後まで自分の口で食べられる人生を「寿ぐ」社会の実現に貢献することを願って活動を続けていきたいと考えています。
Kuchino Kenkoto Taberu Chikarawo Sasaerukai