早田雅美
NPO法人ハート・リング運動専務理事
東京医科歯科大学非常勤講師

いつまでも笑顔でおいしく食べる

父に続き母も重い認知症になり、在宅を中心にした両親の介護は今年まで足掛け25年目続きました。仕事と介護、時には子育てまで、時間的にも精神的にも重い負担が重なれば重なるほど、介護には「やりがい」を感じられるようになることが大切だと思いました。

認知症は治りませんが、発症から終末期まで両親を支えてきた生きる活力や最後まで残せる生きがいがあるとしたら、それはいつまでも笑顔でおいしく食べてくれることでした。高齢者に限ったことではありませんが、大きな病気やけがで入院をしたあと、現在の入院事情ではしっかりと自分で食事が摂れるまで食のリハビリテーションを終えて退院することが難しい場合もあります。その場合は、かかりつけ医、かかりつけ歯科医、専門のメディカルスタッフへの相談や介護者による応援が不可欠です。「いつまでも笑顔でおいしく食べる」ことは、人生100年時代の健康寿命延伸やQOLの維持のために、つまり介護予防には欠かせない目標です。そのことは報われる可能性が高い目標です。私たち市民が自分自身や大切な家族のために、少しでも多くの正しい知識を得ること、相談できる専門家を持つことで自分たちの健康と生きがいを守っていかねばならないのです。

2021年、大英博物館ミイラ展が東京の国立科学博物館で開催されました。6体の古代エジプトのミイラのMRI画像で当時の貴族や神官だった彼らの多くが、ひどい虫歯や歯周病に悩まされていたことがわかりました。中にはおそらく食事が難しいほどの状態で、それが死因につながった可能性もあると指摘されていて驚きました。現代でも、口の健康は全身の健康維持のための玄関口として世代を問わず大切なのです。







Kuchino Kenkoto Taberu Chikarawo Sasaerukai