末瀬一彦

公益社団法人日本歯科医師会常務理事
一般社団法人奈良県歯科医師会会長
一般社団法人日本デジタル歯科学会会長
末瀬歯科医院院長

日常生活を支える歯科医療
8020から9028へ〜

医療が「目の前にいる人の生命を助けること」であるのに対して、歯科医療は「何気ない日常生活をサポートすること」だと思います。好きなものをおいしく食べて、楽しく会話ができる環境つくりをするのが歯科医療の役割だと思います。 

現在、「8020運動」が実施され、80歳で自分の歯を20本残そうとする運動です。歯科医師や歯科衛生士の啓蒙のおかげで、その達成率は51.3%(2016年調査)まで増加し、とてもすばらしいことです。しかし、人の歯は神様が与えた28本が正常です。手足の指は左右5本ずつあり、1本でも失われれば大騒ぎになりますが、お口の中の歯が1本抜けても平気な顔ですね。28本の歯はすべて形態、機能が異なり、1本1本がそれぞれ重要な役割を果たしています。「8020」は60歳で15本の歯しかない人、80歳で全く歯のない人には無縁の話(歯なし)ですね。

私は、「9028運動」を提唱しています。90歳(長寿)で、自分の歯+人工の歯=28本の意味で、何歳になっても歯が失われれば、かかりつけ歯科医院で治療をし、いつも自分のお口のなかには、自分にあった28本の歯があるということです。今は、材料開発も進み、治療の方法もたくさんあります。80歳で歯が全くない人は、自分にあった総入れ歯を入れることによって、おいしく食事ができ、美しい笑顔で楽しく会話がはずみます。

「9028運動」の実践は、歯科医師、歯科衛生士に加えて歯科技工士の存在も見えてきます。 「生きがいのある健康長寿」は、何歳になってもお口の中にしっかり噛み合わせができる28本の歯を保有することから始まります。まさに「9028は食べる力を支える」ことになります。







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